藤岡 亜津史 さん
漁師になりたい。その一心で移住を決意
秋田県美郷町の出身で、地元の工業高校を卒業した後、一度群馬県で就職しました。
秋田に戻ってきてこれから何をやりたいかを考えていたのですが、祖父が遠洋漁業をしていたことから漁師という職業に興味が出てきました。八峰町で行われた漁業体験会に参加して実際にやってみたら、「漁師になる」って気持ちが固まって、秋田県庁と水産振興センターに相談したんです。そうしたら、漁業に就きたい人をベテラン漁師が指導してくれる「秋田の漁業担い手育成支援事業」という県の研修制度を勧められました。自分の希望に合わせて研修先を探してもらった結果、紹介されたのがにかほ市の金浦港にある底引き網漁船「第五栄徳丸」でした。
すぐに親方と金浦漁協の方に面談してもらい、その次の日には船に乗せてもらえることになったんです。指導してもらいながら少しずつ仕事を覚えて、翌月にはにかほ市へ引越しをし、その次の月には、正式に乗組員として雇用してもらえることになりました。
港の仲間と共に経験を積む日々
朝早く起きて夕方くらいまでかかる仕事なので、体力的にキツい時もありますが、休みもきちんと取れます。ハタハタの収穫時期は忙しいですが、獲れる量が増える分、やりがいもありますね。
漁師って、ちょっと怖いイメージありませんか?私もそう思っていたんですけど、実際に漁師の中に入ってみたら、皆本当に気軽に話しかけてくれるし、色々教えてくれる。こっちに来るまで友だちも漁師の知り合いは1人もいない状態でしたが、みんなフレンドリーに接してくれるので、気負わずに入っていけました。江戸時代から続く掛魚(かけよ)祭りなどの地区のお祭りに参加させてもらったことも大きかったかもしれません。
ただ、言葉だけは結構苦労しましたね。地元とは方言も違うし、漁師ことばもあるので最初は本当に全然分からなかったけれど、世間話をしたりする中で少しずつ覚えていきました。
自分はまだまだ日々勉強中です。漁師って毎日やる仕事もあれば、例えば縄の交換など数年に一度だけ必要な仕事もあるので、他の船の仕事も手伝ったりしながら、学ばせてもらっています。漁師になって3年目。自分がここに来た後に港に入ってきた若い人もいます。まだまだ教えられるような立場じゃないし、一人前と言えるようになるには時間がかかりますが、憧れていた職業に就けて満足していますし、この仕事をこの先も続けていきたいです。
船から眺める雄大な鳥海山
漁師としての仕事が決まって、ここで暮らすと決めた時に冬の降雪量が不安でしたが、秋田の内陸にある地元の美郷町と比べると、にかほ市は雪がそれほど積もらないので安心しました。買い物をできる場所が限られてはいますが、自然も多いし、不便さは全く気になりません。
にかほ市はオープンな気持ちで接してくれる人が多いので、以前より自分も壁を取り払って話ができていると感じています。人間関係では困らない場所だと思いますね。親方にも家に招いてもらったり、一緒にお酒を飲ませてもらったりしますし、自分の船以外でも金浦港の同じ年代の人たちと仲良くさせてもらっています。今では、この港のコミュニティの一員としてここにいると感じています。
あと、ここ金浦はアワビや岩ガキなどの潜水漁業も盛んなのですが、これが本当に楽しくて、仕事だというのを忘れてしまうくらいです。船の上で食べる魚も最高だし、漁業に携わっているからこその特権を味わうことができます。
こっちに来てから、鳥海山を眺めることが多くなりました。地元の校歌にも入っていたけど、正直あんまり思い入れがない山でした。でも、にかほ市で見るとその雄大さが全然違う。今は、船から見る鳥海山が気に入っています。
【にかほ市暮らしガイドブック(令和元年度版)より】
にかほ市役所 商工観光部 商工政策課
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