佐藤 まりえ さん

二人で農業を継ぐ!と決断して移住

 高校から陸上部に入り、円盤投げをしていました。インターハイ、国体にも出場し大学は推薦で千葉の大学に入学。大学生活はあっという間でしたが充実していました。その後、東京や千葉で仕事をし、首都圏での生活にある程度満足感もありましたね。
 大学在学中に、ケガの治療のために部活を休まなければならない期間があり、その間のトレーニングとして出会ったのがヨガです。国際ヨガ協会というところで指導を受けたのですが、指導方法や段階的に何年もかけて資格を取得する制度が私には合っていて、受講生から指導者へと進んでいきました。
 ヨガ講師として市民講座で指導をするようになった頃、祖父が突然亡くなって。ショックもありましたが、父は会社勤めでしたし、母も体調を悪くしていたので、祖父がやっていた農業を継ぐのは私しかいない、とすぐに使命感のようなものを感じ移住を決断しました。
 当時、主人とはお付き合いをしていたのでお互い離れ離れになるのも辛かったのですが、まずは帰って農業をしたいという想いがむくむくと湧き上がってきました。その後、主人も秋田に来ることになり、結婚してふたりで「農業」をしていこう!という結論にいたりました。
 私たちが住んでいる三森地区は、入り組んだ場所にあるので、農作業用の大型機械が入って行きにくい、塩害を免れないという課題もあって、「農業をするのは大変だ」「野菜は育たたない」という声もありました。「でも工夫次第でできるかもしれない!」という前向きな思いがあり、主人とふたりで畑を耕し、自家消費用の野菜を植え始めました。

仕事も農家もヨガも。毎日が充実

 私は地元の鉄工会社で事務の仕事をしていますが、主人は秋田県が行っている「未来農業のフロンティア育成研修」という農業研修を受けています。新規就農や、新たな農業の種類を始めたい方に必要な農業技術を身につける研修制度です。2年間、びっしりと学べるので、初めて農業をする方には嬉しい制度です。
 そこで学んだことを生かしながら、帰宅後や土日の限られた時間を有効に活用して、私と一緒に父の農作業を手伝っています。主人も農業は初めてですが、元々ものづくりが好きだったこともあって、「農業は楽しい」と言っています。研修を終えて一人前になり、祖父がやっていた米だけでなく、野菜など様々な作物の栽培に取り組みたいと思っているようです。
 兼業農家をしながらの忙しい日々ですが、毎週水曜日の夜は、依頼を受けて市内の公共施設でヨガ講師をしています。ヨガを始めてから腰痛がなくなった、股関節が柔らかくなったという方もいて、講師としての時間にも充実感を感じています。秋田県は、健康寿命日本一を掲げていますが、「秋田の健康をにかほから」を目標にこれからもヨガの普及に努めていきたいです。

広くて深い「愛すべきコミュニティ」

 農業をやるにしても、ヨガをやるにしても頑張っている姿をみていてくれて、自然と協力者が増えていくところが田舎のいいところ。おせっかいじゃないか、というくらい人との距離が近いのですが、広く浅い都会の人間関係とは違って、ここでのコミュニティは広くて深い。まさに「愛すべきコミュニティ」なんです。その支えはとても心強いです。
 また、将来は子どもが欲しいと思っていますが、都会での子育ては考えられないというのが、移住のきっかけでもありました。子ども達が野原を駆け回ったり、作物が育つ様子や収穫を通して、学ぶことがたくさんあるはずです。そして、鳥海山を始めとした山々があり、川があり、海があり、星がきらめくこの環境の中で、子どもを育てたいです。私、ここから見る日本海に沈む夕日が好きなんです。
 両親も口には出しませんが私たちの移住を喜んでくれているみたいなので、ようやく親孝行のスタートラインに立てたかな、と思っているところです。

 

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【にかほ市暮らしガイドブック(令和元年度版)より】

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